神宮前レコスタ!ブログ

サウンドエンジニア・サウンドプロデューサー 藤原の雑記

音楽業界の二極化が進む中で、ライブハウスの灯を守るために

音楽業界は今、はっきりとした二極化の波に揺れています。
ひとつは、大規模コンサートやフェスティバルに象徴される華やかな舞台。巨大なアリーナや野外会場を埋め尽くす観客、圧倒的な演出とサウンドは、ショービジネスの最前線を体感させてくれます。そこには資本力とマーケティング力を持つアーティストや企業が集まり、観客もまた「一度きりの特別な体験」を求めて足を運びます。

しかしその一方で、日本国内のライブハウスや小規模な会場は深刻な課題に直面しています。コロナ禍の影響が薄れた今も、観客の足は完全には戻らず、運営コストや物価上昇が経営を圧迫しています。集客のための宣伝費はかつてより増し、客席に空きが目立つ公演も珍しくありません。

この二極化の背景には、経済的な格差だけでなく、文化的な価値観の変化があります。大規模イベントはSNSでの共有や話題性によって高い需要を維持する一方、ライブハウスのような日常的な音楽体験は、デジタル配信やオンライン視聴の普及によって足が遠のきがちになっています。

しかし、ライブハウス文化は単なる娯楽ではなく、日本の音楽シーンを育ててきた重要な土壌です。小さなステージでの演奏は、アーティストが腕を磨き、観客との距離を感じながら成長する貴重な機会です。この場が衰退すれば、やがて大きな舞台にも新しい才能が現れなくなる可能性があります。

私が運営する神宮前レコーディングスタジオでも、若いアーティストの制作や音源づくりを数多くお手伝いしています。現場で感じるのは、ライブハウスで培われる「生の息づかい」が、録音作品にも必ず反映されるということです。スタジオで磨かれた音と、現場で鍛えられた感覚は表裏一体であり、その両方が揃って初めて心を動かす音楽が生まれます。

これからの日本の音楽文化を守るためには、単に海外の大型イベントに倣うのではなく、小規模会場ならではの価値を再定義し、発信していく必要があります。レコーディングスタジオもまた、その一端を担う場所です。音を形に残す作業は、未来に向けた文化のアーカイブであり、同時に次世代のアーティストを育てる現場でもあります。

華やかなスポットライトが注がれるステージの陰で、小さな灯火が静かに消えていく──そんな未来を防ぐために、私たちは今こそ足元の音楽文化に目を向け、守り、育てていくべきではないでしょうか。

お問い合わせは公式LINEからも受付中

公式LINEで問い合わせる