「昔はさ、声優になりたいっていう子がもっといたよね」
スタジオに訪れた常連さんが、ぽつりとこぼしたその言葉が、妙に胸に残っています。
私たちも日々、録音に来られるお客様をお迎えしていて、
なんとなく、同じようなことを感じています。
かつては、声優志望者の方が「オーディション用のデモを録りたい」と来られることが多かった。
でも今は、VTuberの方や、朗読配信のために録音される方のほうが増えています。
オーディションが減っている
一昔前は、事務所が新人声優を募集するオーディションがあちこちで行われていました。
でも、2025年の今、それはかなり少なくなっています。
今ではほとんどが「養成所内部の選抜」や「紹介ベース」で行われるものに変わってきました。
お金も時間もかけて養成所に通っても、その先が見えにくい。
そんな状況が、「声優を目指そう」とする人たちの気持ちに影を落としているのかもしれません。
でも、声を届ける方法は増えている
それでも不思議なことに、声を使って何かを表現している人は、以前より増えている気がします。
バイノーラルマイクでASMRを配信している人
キャラになりきって朗読配信をしているVTuberさん
スマホ一台でラジオ番組風の音声投稿をしている方
「声優になること」じゃなくて、
「声で何かを届けたい」という気持ちを、
いろんな方法で叶えている人たちがたくさんいる。
その自由さは、とても素敵だなと思います。
声優という肩書きにこだわらなくてもいい時代
もちろん、声優という肩書きがなくなるわけではありません。
でも、“肩書きがなくても声を使って仕事ができる”という実感を、若い世代の人たちは自然に持っています。
録音スタジオとしての私たちは、そんな皆さんの
「声を届けたい」
「声で何かを残したい」
という想いを、できるかぎり形にしていきたいと思っています。
最後に
声優という夢が、少しずつ形を変えていく中で、
その変化に寄り添いながら、スタジオとしてできることを考えていきたい。
肩書きよりも、届けたい想いのほうが大切。
そんな価値観が、2025年の“声の世界”にはあるような気がしています。