レコーディングの世界がアナログからデジタルへと移り変わって、もう久しいですね。
アナログの頃は、すべてが“ゆっくり”でした。テープを巻き戻し、位置を確認し、録り直し…。エンジニアもミュージシャンも、どこか余白を大切にしていたような時代。
でも一方で、「本当はこうしたいけど、技術的にできない」ことも多かったのも事実。音の加工にも限界があり、環境に左右されることもしばしば。
だからこそ、今のデジタル環境でのレコーディングには本当に感動しています。
「昔なら無理だったな」ということが、今ではスムーズにできてしまう。ピッチ修正やコンプ処理、定位の調整…全部、かつては“神ワザ”だった操作が、今は標準装備です。
けれど、ここでひとつ思うのは——
結局、アナログの技術を知っているエンジニアが、デジタルを扱うのが一番強いんじゃないか? ということ。
なぜなら、「整えられた音」だけでなく、「本来の音」の美しさや立体感を知っているからです。
耳を鍛え、現場で鍛えられ、失敗から学び、手を動かしてきたエンジニアたちが、今のツールを使いこなすことで、昔とは比べものにならないクオリティの音が生まれる。
アナログ時代を生き抜いてきた“おじさんエンジニア”が、ようやく日の目を見る時代になってきたのかもしれません(笑)。
新しいものをただ否定するのではなく、受け入れて、自分の武器にしていく。
そんなスタンスで、これからも神宮前レコーディングスタジオは進化していきます。